汚れてこそ、格好いい。

C.C.BAXTERは葉山の海沿いにあるダレスバッグ専門の小さな工房です。
ダレスバッグとは、口枠を革張りした高級紳士鞄のこと。
個人オーダーやOEM生産で経験を積んだ「鞄職人」の工房です。

ですが今回は、ダレスバッグではなく、職人が仕事のために作ったワークエプロンをお届けいたします。下半分が二つに分かれ、どんな姿勢でも太ももをカバーしてくれる、オールレザーのワークエプロンです。

革は大きく分けて「タンニン鞣し」と「クロム鞣し」の２種類があります。タンニン鞣しは革本来の質感がよく感じられる豊かな表情とタフな堅牢性を持ちますが、重くて硬いというデメリットがあります。一般的にはタンニン鞣しのほうが高級とされており、価格も高いです。
対してクロム鞣しは表面の質感が均一で、柔らかくしなやかという特徴を持ち、タンニン鞣しに比べて比較的安価です。

どちらも十分な耐久性を持ちますが、ワークエプロンという特性上、タンニン鞣しの堅牢性は魅力なものの、少しオーバースペックであるようにも思えました。また、汚れることを前提のものに、高級素材と言われる材料を使うのも素材への敬意を欠くと考えます。ですのでこのエプロンには「タンニン鞣しに似た風合いのクロム鞣し」の革を使用しました。素材をそのまま大きく使用していますので、色ムラや傷などがある場合があります。

新品のうちはすこし張りがあり固く感じるかもしれませんが、使用していくうちに柔らかくしなやかになっていきます。柔らかくなっても革本来の耐久性は損なわれません。
持ち主の仕事に合わせて汚れ、こなれて、 はじめて「完成」するワークエプロンです。

ナチュラルカラーとブラックの、２色のカラーバリエーションを用意しました。
ブラックは汚れが目立ちにくく、ナチュラルは革らしい色合いと風合いです。お好みに合わせてお選びください。

革を扱う仕事は、針や刃物や染料、焼き鏝や接着剤や各種オイルなど、実はかなりヘヴィな作業が多く、防護のためのエプロンは必須です。
デニムや帆布など、丈夫な生地でのヘヴィデューティなエプロンはたくさんありますが、織生地は針やトゲなど鋭利なものを生地目にひっかけることも多く、洗濯ができるというメリットは水や染料が染み込んでしまうというデメリットにもなってしまいます。さらにダレスバッグのようなハイエンドクラスの鞄を作る際には手縫いの工程が発生しますが、その際は足で挟む固定具を使用します。この時に通常のエプロンでは邪魔になるばかりで機能を果たさず、困っておりました。

そんな折にかつて馬車が交通の要であった時代に、馬の蹄鉄を製造し取り付ける蹄鉄職人たちが使っていたという足割れエプロンの存在を知ったのです。
しかし最早どこにも売っていないものでしたので、職人らしく「ないものは作る」のDIYスピリットにのっとり、さらには丈夫で刃物にも熱にも水にも強い、革という慣れ親しんだよく知っている材料で作ればいいじゃないかとすぐに思い至りました。

こちらが実際に工房で使用していた革エプロンと、原型になった蹄鉄職人のエプロンです。クロムレザーの方には染料や塗料などが大量についていますが、６年ほどの使用の中でエプロンを貫通してこれらが衣服についたことは全くありません。


革は防熱・防炎性も高い素材ですので、屋外で火を使う作業や焚き火愛好家、火花の出るような金属加工などにも向いています。
さらに保温性が非常に高いので、冬の屋外や倉庫などでの作業にはまるで固定式のひざ掛けをかけているような温かさです。（その分夏は暑いので熱中症には十分ご注意ください

ポケット類はエプロン上部に深めのペンスロットを3本と、12cm×14cmのポケットをつけました。腰の左右には24.5cm×19cmの深めのポケットと、センターにも14cm×25cmのポケットがあります。すべて裂け防止にカシメで補強してあります。左腰には、ウェスやツールを下げられるループを、右腰にはナスカンのフックをつけました。

腰ベルトはサイズの調整がしやすいように、ベルト穴のないタイプの尾錠を採用しています。動きやすく緩めにしていても解けてくることはほぼないと思います。

エプロン下部を２つに割り、下部の固定用にハトメ穴をあけてあります。このハトメ穴にお手持ちの靴ひもなどを通して固定すれば、どんな姿勢でも太もも部分をカバーし動作を邪魔しません。写真のようにゆるめにしておくのが、止めるのも動作も簡単なのでおすすめです

しゃがむ、またがる、足で挟むといった動作の際にもエプロンがきちんと足を保護し、エプロンを外す必要がないため、バイクや自転車の整備、園芸や家庭菜園、屋外での動物の世話などにも向いていると思います。バイクや自転車の整備なら、エプロンを外さずにそのまま試乗ができますね。すべてのハトメ穴に紐を通して完全に固定すれば、チャップスのような簡易防寒具としても役立つと思います。

飲食店のまかない飯のような、職人の工房で作られたタフなワークエプロン。
これを必要とする人の、良い相棒になることを願っています。